「親が段差でつまずくようになった」「浴室の出入りが不安になってきた」。加齢や体調の変化にあわせて、住まいに手を入れることを検討する方は少なくありません。
こうした工事で使えるのが、介護保険の住宅改修費です。要支援・要介護の認定を受けている方が対象で、支給限度基準額は要介護度にかかわらず20万円。このうち所得に応じて7〜9割が支給され、給付額は最大18万円とされています。
ただし、対象になる工事は6種類に限られています。さらに工事に着手する前の申請が原則で、先に工事を始めてしまうと給付を受けられないことがあります。
この記事では、対象になる工事と申請の手順、支払い方法の違い、20万円を使い切った後の扱い、あわせて確認しておきたい自治体独自の助成や税の優遇について整理します。
記事内の内容は2026年7月時点の公表情報にもとづく参考情報です。制度の要件や補助額、受付状況は変更される場合があります。契約や着工の前に、必ず厚生労働省の福祉用具・住宅改修のページと、お住まいの市区町村の窓口で最新情報をご確認ください。
介護保険の住宅改修費は上限20万円

厚生労働省の資料では、住宅改修の支給限度基準額は同一の住宅・同一の被保険者につき20万円とされています。要支援・要介護の区分にかかわらず定額で、要介護5だから枠が大きくなる仕組みではありません。
1回の工事で使い切る必要はありませんが、原則として同じ住まいで生涯にわたって使える総額が20万円と考えておくとよいでしょう。一定の条件を満たすと再度設定される場合もあります(後述)。
保険給付は原則9割で、所得に応じて8割・7割となります。
| 保険給付の割合 | 支給額の上限 | 自己負担の目安 |
|---|---|---|
| 9割(原則) | 18万円 | 2万円 |
| 8割 | 16万円 | 4万円 |
| 7割 | 14万円 | 6万円 |
自己負担額は、工事費が20万円ちょうどだった場合の目安です。20万円を超えた分は全額が自己負担となります。
対象になるのは、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けている方です。対象となる住宅は、被保険者証に記載された住所で、実際に居住している住宅に限られます。
なお、限度額の範囲内であれば複数回に分けて申請することも可能とされています。
対象になる住宅改修は6種類

介護保険で対象となる工事は、厚生労働省の告示で次の6種類に定められています。
- 手すりの取付け
廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに、転倒予防や移動・移乗動作に役立てる目的で設置するものです。 - 段差の解消
敷居の撤去、スロープの設置、浴室の床のかさ上げなどです。昇降機やリフトなど動力で段差を解消する機器は除かれます。 - 床または通路面の材料の変更
滑りの防止や移動の円滑化を目的とした変更です。居室の畳からフローリング材へ、浴室の床材を滑りにくいものへ変える工事などです。 - 引き戸等への扉の取替え
開き戸を引き戸・折戸・アコーディオンカーテンなどに取り替えるほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も含まれます。 - 洋式便器等への便器の取替え
和式便器から洋式便器への取替えや、既存の便器の位置・向きを変更する工事です。 - これらに付帯して必要となる住宅改修
手すり取付けのための下地補強、床材変更のための根太の補強、扉の取替えに伴う壁や柱の改修工事などです。
「介護リフォーム」と呼ばれる工事のすべてが対象になるわけではなく、増築や新築、大規模なリフォームは対象外とされています。
対象外になりやすい工事の例
自治体の手引きでは、次のような工事は給付対象にならないと整理されています。
- 福祉用具で対応できるもの
貸与の対象となる手すりやスロープを「置く」だけの場合、購入の対象となる腰掛便座を置く場合は、住宅改修として扱われません。 - 老朽化や摩耗が理由の工事
既存の手すりが古くなったための取替えなど、老朽化や物理的・化学的な摩耗、消耗が改修の理由となる工事は対象外とされています。 - 洋式便器から洋式便器への取替え
すでに洋式便器がある場合に暖房機能や洗浄機能のみを付加する工事も対象外です。また、水洗化にかかる部分の費用も対象外とされています。
手すりについても、紙巻器付き手すりの紙巻器部分など、機能以外の付加部分は対象外とする扱いが示されています。見積もりの段階で確認しておきましょう。
申請は必ず工事の着工前に行う

もっとも注意したいのが事前申請です。厚生労働省の資料では、必要な書類を添えて事前に市町村へ申請書を提出し、工事完成後に領収書等を提出することで保険給付されると説明されています。
自治体の手引きでも、承認を受ける前に行った改修は給付対象にならないと明記されています。
- ケアマネジャー等に相談する
担当がいない場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口が相談先になります。 - 施工事業者を選び、見積もりを依頼する
複数の事業者から見積もりを取ることが推奨されています。 - 工事前に市区町村へ申請する
支給申請書や住宅改修が必要な理由書などを提出します。 - 市区町村が内容を確認し、結果が示される
保険給付として適当な改修かが事前に確認されます。 - 工事を施工し、費用を支払う
承認された内容どおりの施工かが、後の確認対象になります。 - 工事後に支給申請を行う
領収書など、費用が発生した事実がわかる書類を提出します。 - 支給額が決定し、支給される
事前に提出した書類との照合を経て支給されます。
事前承認までに1週間から10日程度を標準審査期間としている自治体もあり、現地確認や書類の不備があればさらに時間がかかります。工事の時期は余裕をもって計画しましょう。
おうち職人では、希望する工事内容を入力して、対応できる職人へ匿名で見積もりを依頼できます。介護保険の利用を検討している場合は、相談の段階でその旨を伝えておくとスムーズです。手すりの設置や段差の解消は浴室やトイレで行うことが多いため、浴室リフォームの費用相場やトイレリフォームの費用相場もあわせて見ておくと、介護保険の対象外になる工事まで含めた予算を立てやすくなります。
申請に必要な書類

厚生労働省の資料では、提出書類は工事前と工事後に分かれています。
| 提出の時期 | 主な書類 |
|---|---|
| 工事前(事前申請) | 支給申請書/工事費見積り書/住宅改修が必要な理由書/改修後の完成予定の状態が分かるもの(写真や簡単な図面など) |
| 工事後(支給申請) | 費用に係る領収書/工事費内訳書/完成後の状態を確認できる書類(箇所ごとの改修前後の写真)/住宅の所有者の承諾書 |
改修前後の写真は箇所ごとに撮影し、原則として撮影日がわかるものとされています。所有者の承諾書は、住宅の所有者が利用者本人でない場合に必要です。
住宅改修が必要な理由書は誰が作るのか
厚生労働省の資料では、理由書の作成者は介護支援専門員(ケアマネジャー)や地域包括支援センターの担当職員のほか、福祉・保健医療・建築の専門家とされています。自治体の手引きでは、これを受けて理学療法士、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上の有資格者などを作成者として挙げている例がみられます。認められる範囲は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
利用者本人や施工事業者が自由に作成できる書類ではないため、まずケアマネジャーへの相談が入り口になります。
償還払いと受領委任払いの違い

住宅改修費の支払い方法には2つの形があり、どちらが使えるかは自治体によって異なります。
| 方式 | 最初に支払う額 | 特徴 |
|---|---|---|
| 償還払い | 工事費の全額 | 後日、保険給付分が本人へ支給される |
| 受領委任払い | 自己負担分のみ | 残りは自治体から事業者へ直接支払われる |
償還払いが原則です。工事費が20万円なら一時的に20万円を用意する必要があり、受領委任払いはこの負担を軽くするための仕組みです。
ただし、受領委任払いはすべての自治体・事業者で使えるわけではありません。自治体に登録している事業者を利用した場合にのみ適用され、登録外の事業者では自動的に償還払いになる運用の自治体もあります。介護保険料の滞納がある場合に利用できないとしている例もあります。
資金の準備に不安がある場合は、受領委任払いを実施しているか、依頼予定の事業者が登録事業者かを事前に確認しましょう。
20万円を再度使えるケースがある

厚生労働省の資料では、次の場合に再度20万円までの支給限度基準額が設定されるとされています。
- 要介護状態区分が3段階以上上がったとき
最初に支給を受けた工事の着工時点と比べて、介護の必要の程度が著しく高くなった場合です。この取扱いは1回に限られます。 - 転居した場合
支給限度基準額は現に居住している住宅ごとに管理されるため、別の住宅へ移れば改めて設定されます。
「3段階」は、要介護状態区分を次の6段階に置き換えて判定されます。
| 段階 | 要介護状態区分 |
|---|---|
| 第一段階 | 要支援1・経過的要介護 |
| 第二段階 | 要支援2・要介護1 |
| 第三段階 | 要介護2 |
| 第四段階 | 要介護3 |
| 第五段階 | 要介護4 |
| 第六段階 | 要介護5 |
要支援2と要介護1が同じ第二段階にまとめられている点に注意が必要です。該当するかの判断は市区町村が行います。
自治体独自の助成や税の優遇もある

市区町村独自の住宅改修助成
多くの市区町村が、介護保険とは別に高齢者向けの住宅改修費助成を設けています。介護保険の対象外となる部分や、20万円の限度額を超える部分に対応する制度が用意されている自治体もあります。
東京都では、市区町村が介護保険給付の対象外となる部分の改修費を助成する場合に、都が費用の一部を補助する仕組みがあります。ただし都が直接住民へ補助を行うものではなく、実施していない自治体もあるとされています。
名称も内容も自治体ごとに異なるため、窓口に直接問い合わせるのが確実です。介護保険と同様に着工前の申請を条件としている場合もあります。
バリアフリーリフォームで使える税制
一定のバリアフリーリフォームを行った場合、税の優遇を受けられる制度もあります。国土交通省の資料では、次のように示されています。
- 所得税の控除
標準的な工事費用相当額をもとに算出した額の一定割合を所得税額から控除する措置です。国土交通省の資料では、リフォーム後、令和10年(2028年)12月31日までに居住する方が対象とされています。 - 固定資産税の減額
新築から10年以上経過した住宅が対象で、翌年度分の固定資産税が3分の1減額されます。適用期限は令和13年(2031年)3月31日まで、申告は工事完了後3か月以内とされています。
対象工事には手すりの取付け、床の段差解消、浴室・トイレの改良、出入口の戸の改良などが含まれます。ただし、2つの制度は対象者の要件が異なります。
| 制度 | 対象者の要件 |
|---|---|
| 所得税の控除 | 50歳以上の方、要介護・要支援の認定を受けている方、障がいのある方、または要介護・要支援・障がい・65歳以上のいずれかに該当する親族と同居している方 |
| 固定資産税の減額 | 65歳以上の方、要介護・要支援の認定を受けている方、障がいのある方のいずれかが居住していること |
また、所得税の控除には、合計所得金額が2,000万円以下であることという所得の要件もあります。
もう一点、介護保険を利用する場合に見落としやすいのが工事費の下限です。どちらの制度も50万円超であることが要件とされていますが、この金額は補助金などの交付を受ける場合、その額を差し引いた後の金額で判定されます。介護保険の住宅改修費もこの補助金に含まれるため、介護保険を使うと50万円のラインに届かなくなる場合があります。
なお、所得税の控除で用いる金額は、実際にかかった工事費ではなく、国土交通省の告示で定められた標準的な工事費用相当額である点にも注意が必要です。
いずれも要件が細かく、税制は改正も頻繁です。適用の可否は税務署や市区町村の窓口で確認してください。
介護リフォームの補助金に関するよくある質問

賃貸住宅でも使えますか?
被保険者証に記載された住所で、実際に居住している住宅であれば、賃貸住宅でも対象になり得ます。ただし住宅の所有者が本人でない場合は所有者の承諾書の提出が必要とされています。まずオーナーや管理会社へ相談しましょう。
20万円は1回で使い切る必要がありますか?
限度額の範囲内であれば、複数回に分けて申請することも可能とされています。ただし申請の度に事前申請と支給申請の手続きが必要です。必要な工事をまとめて計画するか、優先度の高いものから進めるかを、ケアマネジャーと相談して決めるとよいでしょう。
手すりだけの工事でも申請できますか?
手すりの取付けは対象工事の1つに定められているため、その工事だけでも申請できます。手すりの補助金として単独で利用されるケースも少なくありません。
ただし、福祉用具貸与の対象となる据え置き型の手すりを置くだけの場合は、住宅改修として扱われません。
認定を受ける前に工事をしてしまいました
住宅改修費の対象は、要支援・要介護の認定を受けている方です。認定前の工事の扱いは認定申請の時期などによって異なるため、市区町村の窓口へ相談してください。
また、事前申請を行わずに着工した工事は原則として給付対象にならないとされています。やむを得ない事情がある場合の例外的な取扱いも示されていますが、認められるかは市区町村の判断となります。
施工業者はどこでも構いませんか?
介護保険の住宅改修では、施工事業者に特別な指定を設けていない自治体が一般的です。一方、受領委任払いを利用する場合は、その自治体に登録している事業者であることが条件になります。
また、事前申請の内容と実際の取付け位置などが違っていると給付対象にならないとしている自治体もあります。
入院中・入所中でも使えますか?
入院中・入所中の方が、その施設の設備を改修する目的では利用できません。また、有料老人ホームやグループホームなど、特定施設の指定を受けている住まいは対象外とされています。
ただし、退院・退所して自宅へ戻るための改修は事前に進められるとされています。厚生労働省の資料では、事前申請前の着工が認められる「やむを得ない事情」の例として、入院・入所中の方が退院・退所後に自宅で生活するため、あらかじめ住宅改修に着工する必要がある場合が挙げられています。
この場合も、支給は退院・退所して実際に居住を始めた後になるのが一般的です。退院の予定が見えてきた段階で、ケアマネジャーや市区町村の窓口へ早めに相談しておきましょう。
介護リフォームの補助金のまとめ
- 支給限度基準額は同一住宅につき20万円
要支援・要介護の区分にかかわらず定額です。保険給付は原則9割で、給付額は最大18万円とされています。 - 対象工事は6種類
手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替え、これらに付帯する工事に限られます。 - 着工前の事前申請が原則
承認を受ける前に行った改修は給付対象にならないとされています。 - ケアマネジャーへの相談が入り口
住宅改修が必要な理由書は、ケアマネジャーなど定められた資格等を有する方が作成します。 - 20万円を再度使えるケースがある
要介護状態区分が3段階以上上がったとき(1回限り)と、転居した場合です。
介護保険の住宅改修は、手続きの順番を誤ると給付を受けられなくなる点が、他のリフォーム補助制度と大きく違うところです。工事内容そのものより、着工前の申請と、申請内容どおりの施工が重要になります。
あわせて市区町村独自の助成や税制も確認しておくと、負担を抑えられる可能性があります。ただしどの制度も要件が細かく、実施状況は自治体や年度によって変わります。契約・着工の前に、必ずお住まいの市区町村の窓口で最新情報を確認してください。
おうち職人なら、工事内容や希望条件を入力して、対応できる職人へ見積もりを依頼できます。相談・見積もり依頼は無料で、氏名などのプロフィール情報を最初から公開せず、匿名で相談を始められます。介護保険の利用を検討している場合は、住まいの状況とあわせて相談してみてください。
記事内の内容は2026年7月時点の公表情報にもとづく参考情報です。制度の要件や補助額、受付状況は変更される場合があります。契約や着工の前に、必ず厚生労働省の福祉用具・住宅改修のページと、お住まいの市区町村の窓口で最新情報をご確認ください。
